# Introduction

Project Sprint は、プロジェクトチーム自らがプロジェクトの主体となり、小さな成果を繰り返し確実に生み出すことを通じて、環境の変化を捉えつづけながら自律的にプロジェクトを推進するためのフレームワークです。

この Introduction では、 Project Sprint がどういった意図で構築され、どういったチームやプロジェクトに適したフレームワークなのかを解説します。また、Project Sprint をどのような性質のものとして捉え、どのようなスタンスで臨んでいただくとよいかをご案内します。

1. Project Sprint を提案する時代的背景
2. Project Sprint が目指す状態
3. Project Sprint における「プロジェクト」
4. Project Sprint のスタンス
5. Project Sprint のフレームワーク

## 1. Project Sprint を提案する時代的背景

プロジェクトの推進に関しては、これまでも多くの知見が蓄えられ、活用されてきました。しかし、近年の社会ではプロジェクトを取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、それに伴って状況が刻一刻と変わる、予測の難しいプロジェクトが増えています。

Project Sprint は、プロジェクトチームがこうしたプロジェクトに対応できるようにするためのフレームワークとして考案されました。

環境の変化の少ない時代においては、当初の条件を不変のものとしてプロジェクトを定義したり計画したりすることができ、最終的に達成したいゴールから単純に逆算して計画的に成果を積み重ねていくことができました。

しかし環境の変化が激しく不確実性の高い現代においては、プロジェクトを取り巻く状況は刻一刻と変わっていきます。すべての活動は取り組んでみないと誰にも把握できないものであり、当初の条件や見通しは当然に変化するものであると捉えなくては、プロジェクトの本質的な成功に近づくことができません。

そのため、プロジェクトを小さな実験の繰り返しと捉え、プロジェクト内外で起きる変化やステークホルダーの要求に応じて、真に実現すべきゴールとそこまでの道筋を短いサイクルでアップデートしつづけていくことが求められます。

こういったプロジェクトでは、プロジェクトチームが自律的に活動できる必要があります。多様なメンバーが、それぞれの専門性と状況に応じて行動を自己決定・実行し、チームで素早く検証するというサイクルを繰り返すのです。

## 2. Project Sprint が目指す状態

上で述べたような要求に応えるために、Project Sprint が目指すのは、以下のような状態です。

* プロジェクトチームが、さまざまな変化に応じて自律的に行動できる
* プロジェクトチームにおいて、プロジェクトを推進するための行動が習慣化されている

前者の目的は変化を素早くキャッチして対応することであり、後者の目的は小さなサイクルで実験と検証を繰り返すことです。

この2つの状態を維持し改善しつづけることができる仕組みとして利用されるのが、定例会議です。

## 3. Project Sprint における「プロジェクト」

プロジェクトは、社会に変化をもたらすためにチームが自発的に行う活動です。

具体的には、次のような特徴をもつ活動が「プロジェクト」であるとProject Sprint では考えています。

* 短く期間を区切った探索的な活動が、反復継続される
* チームに環境の変化を捉えつづける意思がある

とはいえ、これは必要最低限の要素であり、個別具体的な活動がこの特徴にあてはまるかどうかや、 Project Sprint のフレームワークを導入するのに適しているかどうかは、なかなか判断が難しいものです。

判断を助けるために、Project Sprint におけるプロジェクトの捉え方と相反する活動を以下に挙げておきます。こういった活動は、Project Sprint のフレームワークよりも適した進め方が他に存在したり、Project Sprint のフレームワークを取り入れることが構造上困難であったりするものと言えます。

* 環境の変化を考慮しなくてよい活動
  * 3か月で完全に終了しチームが解散してしまうなど、活動自体が短期間で終了し非連続的である
  * 成果物やゴールまでの過程が詳細に決まっているなど、不確実性が高くなく全体を計画することができる
* 環境の変化に即して行動できない活動
  * チームに決定権がなく承認プロセスに時間がかかるなど、素早い意思決定ができない
  * チームに環境の変化を捉えつづけようとする意思がない

## 4. Project Sprint のスタンス

Project Sprint は、[「Adopt & Adapt (採用と適応)」](#user-content-fn-1)[^1]のスタンスで構築されています。

Project Sprint は、多様なプロジェクトに汎用的に適用することが可能です。しかし、 Project Sprint を自分たちのプロジェクトのフレームワークとして採用するかどうか、さらにどの部分をどういった形で採用するかは、個々のプロジェクトチームの意思に委ねられています。重要なのは、プロジェクトチームがどのような価値観に拠ってプロジェクトに取り組みたいかです。

以下のような価値観に共感を覚えるプロジェクトチームは、 Project Sprint との親和性が高く、 Project Sprint のフレームワークによる効果が上がりやすいでしょう。逆に、この価値観への共感が難しい場合、Project Sprint からの提案がプロジェクトチームに混乱を生じさせてしまう可能性があります。

* 所与の条件にとらわれず、チームの自己決定を重視する
* 予測型か適応型かにとらわれず、状況に応じて柔軟に使い分ける
* 最初に決めた目標の達成にとらわれず、小さな実験を日々繰り返し成果と改善を積み重ねる

こういった価値観を反映し、 Project Sprint においてプロジェクトをどのようなものとして捉えるとよいかは、 [Definitions](https://www.projectsprint.org/ja/v4.1/definitions) に改めて詳しく記述しています。

また、 Project Sprint はあくまで実践知を一般化したフレームワークなので、個々のプロジェクトとその置かれた状況に適応するようにテーラリングした上で導入する必要があります。

自分たちがどのようなプロジェクトチームでありたいか、そして自分たちのプロジェクトの実情に最適なのはなにかを、まずは考えてみてください。その上で、 Project Sprint が提案する価値観が、より多くのプロジェクトを自由で創造的なものにすることを願っています。

## 5. Project Sprint のフレームワーク

Project Sprint は、実践知を集めて体系化することによってかたちづくられたフレームワークです。

堅牢な理論に立脚して構築された揺るぎないものではなく、プロジェクトの現場から日々新たな実践知を取り込みながら更新が続けられており、大きな進化の可能性も秘められています。

現在の Project Sprint の中でももっとも本質的な価値と言える内容を、 [Framework](https://www.projectsprint.org/ja/v4.1/framework) にまとめています。Project Sprint の根幹をなすものとしての厳密さを重視しているため、具体的な実践内容やその手順というより、プロジェクト推進の構造やそのための価値観といった、抽象度の高い内容が記述されています。 Project Sprint における各概念の捉え方・考え方や、プロジェクトにおいて推奨される振る舞いを読み取っていただければと思います。

[^1]: [ITIL](https://en.wikipedia.org/wiki/ITIL)の精神に共感し、そのまま採用しています。
