トラックとは

トラックとは

トラックとは、それぞれが強い依存関係を持たず、設定した役割や目標に沿って自律自走できるプロジェクト内の単位です。

Project Sprint 101で説明したように、Project Sprintではプロジェクトを「全体」の達成に寄与するひとつの「部分」として捉えます。トラックも同様に、プロジェクトという全体の達成に必要なそれぞれの部分といえます。プロジェクトゴール達成を目指す過程を、それぞれが強い依存関係を持たず自律的に作業を進めることができる単位にまでブレイクダウンしたものを、トラックと呼びます。

必要なトラックの数や種類はプロジェクトごとに、またプロジェクトのフェーズにより異なります。一般的には、プロジェクト全体の状態を把握するためのメインのトラックをまず設定してマイルストーンを置き、そのマイルストーンの達成のために必要なものを要素ごとに分割することで、その他のトラックが置かれます。

プロジェクトの構想期はまだプロジェクトゴールが明確化されていないため、トラックへのブレイクダウンも進まないことが多いでしょう。その後の形成期や自律準備期において、プロジェクトゴールやマイルストーン、必要な成果物などが明確になってくるにつれて、トラックの分割が進みます。

トラックの分化と統合

トラックを設定する際、まずは「このようなトラックが必要だろう」という仮説を立て、チームメンバーを決めます。この段階ではマイルストーンが置かれておらず、定例ミーティングのみのトラックになるかもしれません。その後定例ミーティングで認識合わせと意思決定を重ねることによってトラックのゴールやマイルストーンが明文化されていきます。

トラック同士は、依存関係が少ない疎結合な状態になるように設定します。トラック同士の依存関係は、個々のトラックの自律的な動きの妨げとなるからです。

とはいえ、最初にトラックを設定する場合やひとつのトラックを複数に分割する場合においては、他のトラックとの境界が曖昧で依存関係が比較的強く残り、他のトラックと密接に協力して作業する必要が出ることもあります。このような場合は、トラックごとの情報を整理して透明性を高め、定期的なミーティングで認識合わせを行いながら、最小限の協力で活動できるよう相互に体制を整えていきます。

こうして見てくると、トラックにもプロジェクトライフサイクルと同様の考え方が適用できることが分かってくるでしょう。必要なトラックの仮説を立てチームメンバーを決めるのが構想期、その後トラックのゴールやマイルストーンを明文化するのが形成期、他のトラックとの連携体制や定例ミーティングの形を整えて自律に向かうのがトラックの自律準備期に当たります。

上述のように、自律準備期までは他のトラックとの境界が曖昧なことも多くあります。また、自律推進期に入ってからも、環境の変化に伴い他トラックとの相互依存関係が密になり、自律的な推進が難しくなることもあるでしょう。その場合には、一旦自律準備期に戻ったと捉えて情報や体制を整理し、改めて定期的な同期・連携による一定程度予測可能な相互作用のみでそれぞれが自律的に動ける状態に近づけていきます。

トラックの分割例

例えば、あるWebサイトを立ち上げるプロジェクトを考えたとき(プロジェクトゴールは「Webサイトの完成」)、Webサイトのデザインを考えるチームと、Webサイトのシステム環境を整える作業は、一定程度関連はしながらも並行して進行します。このとき、それぞれの作業領域をトラックとして分割し、トラックごとにマイルストーンを分けて考えることで、よりプロジェクトを構造化して捉えられるようになります。

上述のWebサイトの例のようなトラック分割だけでなく、営業・マーケティング・CSといったロールベースでのトラック分割や、プロダクトごと・機能ごとのトラック分割など、プロジェクトの性質や規模によって、設定されるトラックは様々です。

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