ミーティングを開催する

個人の取り組みの成果や作成物を共有し環境に対する認識を揃えることで、各メンバーが次の行動に自律的に向かえるようにするための仕組みがプロセスであり、その軸となるのは、チームでのミーティングとそこでのアジェンダの議論です。個々人がタスクに取り組む中で生まれた作成物やアイデア・問題・テンションをミーティングで共有し認識を揃えることによって、プロジェクトチームとしてのアイデアを共同創造し、問題の共同解決を行って次の行動を決定することが重要です。

Project Sprintでは「ミーティング」を、「チームメンバーが一時的に同一の環境に固定されてリアルタイムで会話をすることにより、素早く効率的な認識合わせと、全員にとって納得感のある意思決定をする場」として位置づけています。リアルタイムで全員が参加する定期的・反復的なミーティングで、問題点や違和感を共有して認識を揃え、次の行動とその進め方を決定します。

ミーティングの「型」

この記事では、Project Sprintで行われるミーティングの基本となる進行方法を説明していきます。おおまかな構成としては次のようになっているので、これをまずはじめに頭に入れておくと、それぞれの内容を理解しやすいでしょう。

  • 序盤:タスクの進捗報告、テンショントリアージ、アジェンダトリアージ

  • 中盤:個別のアジェンダアイテムの進行

  • 終盤:今回のミーティングから生まれたタスクの確認と、次回以降のミーティングのアジェンダ確認

さらに、特にミーティングの序盤と終盤は定型化しやすく、時間がたつにつれ、具体的な方法論や必要な時間、細かい順番が定まってきます。チームにとって最適なミーティングの「型」を見つけましょう。

ミーティング開始時

ミーティングの最初に、タスクの進捗報告とテンショントリアージを行ってください。これらを通じて、前回のミーティングから今回のミーティングまでに起こったことについて、チームメンバー同士でアップデートを行います。議論の結果は、その日のミーティングで話すことを決める材料になります。

なお、タスクの進捗報告とテンショントリアージはそれ自体がアジェンダアイテムです。したがって、後述するアジェンダトリアージの前に実施されるものではありますが、これらのアジェンダアイテムの進行についてもモデレーターが担当する必要があります。

タスクの進捗報告

初回のミーティングを除けば、前回までのミーティングを経て、何かしらの各自のタスクが生まれているはずです。これらのタスクの進捗状況を確認しましょう。

タスクを遂行した結果なんらかの作業結果が生まれている場合には、それをもとに話し合うべきアジェンダアイテムがないか確認しましょう。 もし作業結果がなくても、作業が思うように進まないという相談もありうるでしょう。このような場合も、これを解決するためにアジェンダアイテムとしてミーティング内で議論する必要がないか確認しましょう。

なお、この場で挙げるのではなく、ミーティング前にアジェンダアイテムとして提出しておいても構いません。

テンショントリアージ

テンションとは、「プロジェクトに取り組む中で生まれた、他のメンバーに伝えたい違和感」のことです。具体的には、メンバー個人が思う「こうしたらもっと良くなるのに」という現状とよりよい状態の間のギャップ、ちょっとしたアイデア・気になること・不安などのことを指します。またトリアージとは、選別と優先順位づけをする行為のことを指します。

すなわちテンショントリアージとは、個々のチームメンバーが感じている違和感を提案に変えて全員で共有したうえで、今チームを改善するために必要なものを優先的に選び、解決しようとすることです。テンションをあげた本人が、テンションを違和感の解消のための具体的な提案に変換し、本人にとって納得のいく解決策を決定することが大切です。

テンションは一人一人が組織内で自律的に動くための原動力となるものです。重要なのは一人一人がテンションを感知することと、感知したテンションを無視しないことです。それぞれが感知したテンションを自律的に処理することでチームが回り、プロジェクトゴールに近づいていくのです。

前述のように、テンションとは現状とよりよい状態のギャップから生まれるものです。そのため、テンショントリアージを行う際にプログレス及びチーミングの理想の状態や、プロジェクトゴール・マイルストーン、チームのロール)を参照できるようにしておくことが、テンションを挙げるために効果的です。

テンショントリアージで共有した内容は、解決のためのアクションに落とし込むようにしてください。具体的には、直接的な改善策が明確な場合、テンションを解決するための新たなタスクとしてください。また、直接的な改善策が明確でない場合や時間をかけた議論が必要な場合は、新たなアジェンダアイテムとして改善策を探すようにしてください。

なお、この場で挙げるのではなく、ミーティング前にアジェンダアイテムとして提出しておいても構いません。

具体的なテンショントリアージの方法は、現在の心の声を活用する:テンショントリアージで解説します。

アジェンダトリアージ

続いて、アジェンダトリアージを行ってください。アジェンダトリアージには、ミーティングに出席しているチームメンバー全員が参加します。

トリアージとは、ここでも同じく選別と優先順位づけをする行為のことを指します。すなわちアジェンダトリアージとは、その日のミーティングで話したいことを参加者全員で出し合い、優先的に話し合うべきものを選ぶことです。

モデレーターは、アジェンダトリアージを主体的に進行し、最終的な合意まで持っていくことが求められます。

この時点で、2種類のアジェンダアイテムが用意されているはずです。

  1. ミーティング前に提出のあったアジェンダアイテム

  2. タスクの進捗報告またはテンショントリアージの結果、新たに生まれたアジェンダアイテム

アジェンダトリアージは、これらのアジェンダアイテムのうち、その日のミーティングで議論すべきものと議論する順番を決める作業です。プロジェクトゴールやマイルストーンを参照しながら、優先順位をつけていきましょう。

事前に提出されたアジェンダアイテムの内容に不明点があれば、チームメンバーはそれに対して納得できるように質問をしましょう。このとき、ファシリテーターにはこのアジェンダアイテムの改善に関する議論を活発にすることが求められます。

アジェンダアイテムの内容が明確になった結果、あらかじめ設定されていた所要時間だと余りそう、または逆に足りなそうである、と判明することがあります。このときは、アジェンダアイテムの所要時間を調整しましょう。

それぞれのアジェンダアイテムの内容が明確になったら、優先順位をつけましょう。マイルストーン達成のために必要なアジェンダアイテムから議論するのが基本です。直近のマイルストーンの内容と、その期限までに開催できるミーティングの回数を考慮しましょう。マイルストーンを参照した結果、個別のアジェンダアイテムの議論においてどのような結論まで持っていくべきかを調整することもあります。

なお、事前に提出されたアジェンダアイテム以外に、チームメンバーから見て緊急性が高いアジェンダアイテムがある場合には、チームメンバーの合意を得た上で、それらのアジェンダアイテムが優先されます。

優先順位をつけた結果、当日話し合うことができないアジェンダアイテムは、次回以降のミーティングに持ち越しましょう。こうしたアジェンダアイテムがあるとき、アジェンダトリアージは、次の3種類の中から優先順位づけをすることになります。

  1. ミーティング前に提出のあったアジェンダアイテム

  2. タスクの進捗報告またはテンショントリアージの結果、新たに生まれたアジェンダアイテム

  3. 前週までの持ち越しアジェンダアイテム

当日話し合うことになったアジェンダアイテムは、元々の優先順位に従って議論してもかまいませんし、内容に応じて関連するテーマについて続けて議論できるように順番を並べ替えることもできます。並び替えを行うメリットは、関連しあうテーマ同士について続けて議論するほうが効率的であることです。

ミーティングの進行

個別のアジェンダアイテムの消化

アジェンダトリアージが終われば、一つ一つのアジェンダアイテムについて議論しましょう。

一つ一つのアジェンダアイテムは、すでに記載されているアジェンダアイテムの内容に基づき、それぞれのアジェンダアイテムオーナーがメインで進行します。ファシリテーターは議論の内容と最終的な結論がより良くなるように議論に参加しましょう。レコーダーは、議論の経緯・内容をリアルタイムで記録し、参加者が常に見ることのできる状態にしましょう。

アジェンダアイテムの取りまとめ

モデレーターは、アジェンダアイテムを取りまとめ、ミーティングを通して確認や調整を行います。ただし、以下で説明するアジェンダアイテムの確認や調整は、すべてチームメンバーと話し合いながら決めるべきものです。ここでも、直近のマイルストーン達成のためにはどのような選択が有効か、が基本的な判断基準となりますが、最終的にはチームメンバーの話し合いで出た結論が優先されます。

まず、それぞれのアジェンダアイテムが議論されている最中は、予定されている時間内にそのアジェンダアイテムが終わるように気を配ってください。

ただし、議論の内容に応じて、アジェンダアイテムが予定した時間より延長してしまったり、逆に早く終わってしまうことがあります。 アジェンダアイテムが予定した時間より延長している場合、モデレーターはそのアジェンダアイテムを次回に持ち越すようにするか、一定の結論が出るまで議論を続けるかを検討してください。

次回に持ち越す場合、このアジェンダアイテムは、前週までの持ち越しアジェンダアイテムの一つとして扱われます。これまでの過程でアジェンダアイテムの詳細はすでに完成しているはずですが、ここまでで議論した内容もあわせて把握するために、レコーダーが記録した内容も一緒に確認できるようにしておきましょう。

一定の結論が出るまで議論を続けることにしたときは、他のアジェンダアイテムの時間を短縮して調整するか、場合によっては他のアジェンダアイテムを次回以降のミーティングに繰り越すようにしてください。

アジェンダアイテムが予定よりも早く終わってしまった場合、他のアジェンダアイテムの時間を延ばして余裕を持って議論できるようにするか、次回以降に繰り越すようにしていたアジェンダアイテムからその時のミーティング中に先に話し合うべきものがないか、検討してください。また、ミーティングを早く終えることを選択するのも可能です。

また、あるアジェンダアイテムを議論した結果、新しく話し合うべき内容、つまり新たなアジェンダアイテムが生まれることがあります。このとき、当日の追加アジェンダアイテムとして扱うか、次回以降に持ち越すかを検討する必要があります。

当日の追加アジェンダアイテムとして扱うときは、以下のいずれかの対応を取ってください。

  • 他のアジェンダアイテムの時間を短縮して調整する

  • 他のアジェンダアイテムを次回以降に繰り越す

  • ミーティングの参加者全員に確認して、ミーティングの時間を延長する

もしアジェンダアイテムの内容が明確な場合は当日の議論も可能ですが、そうでない場合は次回以降に持ち越すのがよいでしょう。次回以降に持ち越すときは、このアジェンダアイテムはミーティング前に提出のあったアジェンダアイテムの一つとして扱われます。

前週までの持ち越しアジェンダアイテムと違うのは、アジェンダアイテムの内容が明確になっていない点です。したがって、ミーティング中に生まれたアジェンダアイテムについては少なくともアジェンダアイテムオーナーを明確にした状態でミーティングを終えましょう。そして、アジェンダアイテムオーナーは次回のミーティング前にアジェンダアイテムの内容を明確にしておくようにしてください。

ミーティング終了時

ミーティング終了時には、今回のミーティングから生まれたタスクの確認と、次回のミーティングアジェンダの確認を行ってください。これによって、今回のミーティングの結果と、次回のミーティングまでに何をするべきかを確認することができます。これらの作業の前提として、マイルストーンの確認を行うことも効果的です。これによって、次回のミーティングまでに何に対してどこまで取り組むべきかの優先順位付けをしやすくなります。

なお、これらの確認もそれ自体がアジェンダアイテムなので、モデレーターが担当する必要があります。

今回のミーティングから生まれたタスクの確認

今回のミーティングで取り上げたアジェンダアイテムの議論を経て、チームメンバーがやるべきこと、つまりタスクがいくつか生まれているはずです。レコーダーの記録をもとにして、生まれたタスクを確認し、リストアップしましょう。リストアップしたタスクには、具体的な行動内容、担当者、期限を明確にするようにしてください。

次回以降のミーティングのアジェンダ確認

実際にミーティングで取り上げるアジェンダアイテムが確定するのはミーティングの当日ですが、毎回のミーティングの終了時に、次回以降のミーティングで話し合うべきアジェンダアイテムについて議論しておきましょう。このようなアジェンダアイテムには例えば次のようなものがあります。

  • 次回以降に持ち越しになったアジェンダアイテム

  • 進捗確認など、あらかじめタイミングを決めて議論するべきとされるアジェンダアイテム

事前にチームメンバー全員で確認することで、アジェンダアイテムオーナーのアジェンダアイテム提出漏れや、持ち越したアジェンダアイテムの内容の不備を防ぎやすくなります。

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