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Project Sprint は何を可能にするか

Project Sprint は、プロジェクトチームが変化しやすい環境に適応しながら成果を生み出しつづけることを可能にする。
Project Sprint のフレームワークを活用することで、プロジェクトチームは小さな成果を確実に繰り返し生み出せるようになる。それによりプロジェクトチームは、プロジェクトが最終的に実現したい価値とそれを達成するまでの一連の成果を、状況に応じて最適化しつづけることができる。その結果プロジェクトチームは、常に最新の環境に適応した状態で最終的な成果に向かうことができる。

Project Sprint におけるプロジェクト推進の構造

Project Sprint においては、プロジェクトチームが小さな成果を生み出しつづけることを通して、プロジェクトの最終的な成果の実現に徐々に、しかし着実に近づいていくことを、「プロジェクトの推進」と定義する。
そのためにプロジェクトの中では、最終的な成果を達成するまでの行程を小さな成果の積み重ねに細分化し、それを実現すべく実際に作成物を生み出してみるという小さな実験が、プロジェクトチームによって繰り返し行われる。この実験には、二つのインパクトがある。
  • 成果の実現: 実験の中で作成物が生み出され、それが成果となれば、プロジェクトの達成に向けた一歩となる。
  • 仮説の更新: 実験の結果によって、これまでの仮説を検証し、これから生み出すべき成果の仮説を組み立てなおしたり成果を再定義したりすることが可能になる。また、実験を行うことにより、プロジェクト内部から外部への働きかけも行われる。それに伴って、プロジェクト外部の環境に関する情報(環境情報)が少しずつ明らかになる。こうして入手した環境情報も、仮説の更新に寄与する。
もし環境が固定的で情報がすべて明らかになっていれば、実験を行わずとも、最終的に達成したい成果から単純に逆算して成果を積み重ねていけばよいだろう。しかし、変化の激しい時代にあって、実現すべき成果はその時々の外部環境の変化やステークホルダーの要求に応じて変容する。プロジェクトチームはその変化を捉えつづけ、それに応じて成果の仮説を更新していかなくてはならない。
したがって、Project Sprint において、実現を目指す価値もそのために達成すべき成果も固定的なものではなく、あくまで設定時の外部環境を前提とした可変的な仮説である。そのため、外部環境の変化とその情報の取得に応じて、積極的に仮説を更新することが歓迎される。実験は仮説の更新のチャンスでもある。
プロジェクトチームは、こうして仮説を立てて小さな実験を重ね、小さく成果を生み出しながら環境情報を取得して適応を続けることで、漸進的に最終的な成果の達成へ向かっていく。

Project Sprint における成果と出力の関係

プロジェクトチームは、プロジェクトやプロジェクト内の一定のコンテキスト(相互に疎結合なサブプロジェクト)において、最終的に目指す成果をいくつかの中間成果に分解し、それぞれの中間成果を目標に据えて出力に取り組む。この際の目標としての中間成果は、以下のようなものとなる。
  • 外部に依存せず、その成果に関与するチーム内で自己完結的に達成できるものでなくてはならない
  • 環境の変化の影響を受けにくいように、長くとも2か月以内を期日とする
  • 直近の2か月程度を期日とするものはプロジェクトチームが必ず達成すると外部に宣言するコミットメントでなくてはならないが、それ以降を期日とするものは仮説であってよい
成果と出力の関係は、次のようなものである。
  1. 1.
    プロジェクトチームは、外部に提供したい価値を踏まえ、実現すべき成果の仮説を立てる。
  2. 2.
    プロジェクトチームは、1で立てた仮説に従って、直近の中間成果を目標に据えて出力に取り組む。
  3. 3.
    それぞれのチームメンバーは、目標を達成するための行動を自律的に設定し遂行する。
  4. 4.
    チームメンバーによる出力は小さな実験として、次の二つのインパクトを持ちうる。
    • 出力に取り組むことで得られた成果が、最終的な成果の実現に貢献する
    • 出力に取り組むことで得られた環境情報が、成果の仮説を更新する材料になる
  5. 5.
    プロジェクトチームは、上のインパクトに従って成果の仮説を更新し、目標やタスクの設定を最適化する。
この関係に則ってプロジェクトに取り組むことにより、プロジェクトチームは変化しつづける環境と目的に適応し、最新の仮説に従った成果を生み出すべく行動を最適化することができる。

Project Sprint におけるプロジェクトの認識

Project Sprint では、プロジェクトを3つの側面から認識する。
プロジェクトにおける個々の実践を、これらの3つの側面それぞれから解釈してみることで、それぞれの実践がプロジェクトの中で持つ意義や効果をより正確かつ多面的に認識できる。この認識をプロジェクトチームで共有することにより、個々のメンバーは実践に対する各自の具体的な行動を必要に応じて自律的に最適化することができるようになる。
以下の表は、それぞれの側面における認識のしかたを整理したものである。なお、このFrameworkではここまで主にプログレス的側面を取り上げてきた。チーミング的側面及びプロセス的側面については、それぞれこの後のセクションで取り上げる。
Text
プログレス
チーミング
プロセス
何に焦点を当てるか
成果
チームメンバー相互の関係
定例会議
何を目指すか
成果の実現
自律的なプロジェクトチームの形成
プロジェクトを推進・改善しやすい環境の構築
どのような観点から プロジェクトを捉えるか
最終的な成果を達成するまでの行程を小さな成果の積み重ねに細分化して、軌道修正を繰り返しながら徐々に達成する
メンバー相互の信頼関係をベースに、チームの一貫性と個人の自律性をもちチーム全員で進める
定例会議を起点にした環境構築により実験とフィードバックのサイクルを習慣化・活性化させ、プロジェクトやプロジェクトチームの状態をよりよくする
重視される実践
成果の進捗・達成 成果の仮説の設定と更新
価値・成果の認識共有と納得 各自の責任・役割の自覚と引き受け
各自の出力による作成物やアイデアの共同創造 定例会議での問題の共同解決
重視される価値観
反復的・漸進的な成果の実現 環境の変化への能動的な追従
メンバー相互の信頼関係の構築 チーム全員によるプロジェクト推進
各メンバーの自己決定による自律的な行動 定期的・反復的な同期、継続的・漸進的な改善

Project Sprint におけるプロジェクトチーム

Project Sprint では、プロジェクトは特定のリーダーの指揮のもとで進むものではなく、メンバー全員で進めるものだと考えている。それは単に作業を分担するということにとどまらず、プロジェクトが外部に提供したい価値への認識をチームで共有し、メンバー全員がプロジェクト内での活動とその先にあるべき価値を結びつけて捉え自律的に行動できるということを指す。変化しつづける環境や目的に適応するためには、個々人が自身の行動を自己決定できる必要があるからである。
Project Sprint におけるプロジェクトチームの理想の状態とは、チームとしての一貫性を持ちながら、各メンバーが相互の信頼をベースに自律的・主体的に思考・行動できる状態を指す。Project Sprint では、ある事柄に対して自分がチームのために何をすべきかを各メンバーが判断でき、かつ実際に行動できる状態のことを、自律的な状態であると定義する。自律的であるためには、次のようなことが必要である。
  • 最終的に達成したい成果がプロジェクトチーム全員によって合意・納得され、環境の変化に応じた成果の仮説の更新も都度共有されて認識が揃っていること
  • 各メンバーが自身の責任や役割を自覚して納得の上で引き受け、相互の期待値を共有していること
特に後者の根底にあるのはメンバー間の信頼であり、この信頼の構築に最も効果的なのは出力に取り組むこと、つまり作成物を生み出すことである。作成物への取り組みは、価値を実現したり環境情報を取得したりする手段であるのと同様に、役割を引き受けてチームへの貢献と誠実さを示すことによって信頼関係を醸成する手段でもある。他のメンバーの作成物を率直かつ公正に受けとめることもまた、相互の信頼の構築に大きく役立つ。
チームメンバー間の信頼関係がベースにあるからこそ、メンバー個人の多様性が尊重されるとともにチームとしての目的が共有され、結果としてプロジェクトを全員で進めることが可能になる。
プロジェクトチームは、プロジェクトが実現したい成果の仮説(プログレスのストーリー)と、プロジェクトチームにおいて推奨される価値観や態度(チーミングのストーリー)を緩やかに共有し、それを個々のメンバーが思考や行動の拠りどころとすることで、チームとしての一貫性を持つ。プロジェクトチームはこのことにより全体の方向性を揃え、さらに相互に信頼し合うことで、プロジェクトを全員で進めていく。

Project Sprint における最適化の仕組み - 出力と定例会議

Project Sprint においてプロジェクトの推進とは、ここまで述べてきたような実験と最適化を繰り返し行って、プロジェクトの最終的な成果の達成に向けて小さく確実に成果を積み重ねていくことを指す。
そのためには、プロセス的側面がうまく機能してプログレス的側面とチーミング的側面が最適化されている必要がある。この三つの要素すべてに共通して最適化の材料になるのは出力と定例会議である。つまり、各メンバーが出力に取り組み、その産物としての作成物や、副産物である他のメンバーに伝えたいアイデアや違和感を持ち寄って、定期的・反復的に対話を行うことが重要なのだ。
まず、各メンバーの出力により得られるのは、以下のような結果である。
  • プロジェクトの漸進的な進捗が得られる(小さな成果が積み重なる)
  • プロジェクトの現在地を把握するための情報が得られる(仮説の更新の材料となる)
  • 各メンバーの観点で課題やアイデアを提案する材料が得られる(チーム全員の観点を活用する)
これらの結果を持ち寄り、プロジェクトチームからの期待を理解した各メンバーがそれぞれの活動を自己決定する(=自律的に行動する)前提を得るための場として機能するのが、定例会議 である。
定例会議において重要なのは、チームメンバー全員が一時的に同一の環境に固定されてリアルタイムで会話をすることにより、素早く効率的な認識合わせと全員にとって納得感のある意思決定という、同期的な会議でしか生まれない効果を生むことだ。これを定期的・反復的に実施して各メンバーの作成物への取り組みを共有することにより、次のようなことが可能になる。
  1. 1.
    環境情報や相互の役割への認識が揃うことで、価値観や信念を共有し共通の成果の実現を目指すプロジェクトチームとしての結びつきと一貫性が生まれる
  2. 2.
    アイデアの共同創造や問題の共同解決により、各メンバーの行動の前提となるプロジェクトチームとしての意思決定が下せる
  3. 3.
    全員参加で会話することで、メンバーそれぞれがプロジェクトチームとしての意思決定に納得し、具体的なイメージを共有して、自律的に次の行動に向かうことができる
また、定例会議はプロジェクトに一定のリズムを生み出す。このリズムがあることで、タスクの粒度が揃えやすくなったり作業計画が立てやすくなったりするため、各メンバーの行動の習慣化も促される。習慣化された行動により作成物が定期的・反復的に生み出され、それがプロジェクトをアップデートしつづける材料となる。 
最終更新 29d ago