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フレームワーク

Project Sprintは何を可能にするか

Project Sprintは、未来を予測しにくい環境^1において、プロジェクトチームが小さく確実に成果を積み重ねていくためのフレームワークである。
Project Sprintのフレームワークを活用することで、プロジェクトチームはプロジェクトの最終的な成果とそれを達成するまでの道筋を常に最適化することができる。この最適化には、次の二つの要素が含まれる。
  • プロジェクトチームは、プロジェクトを取り巻く環境についての最新の情報を手に入れ、その情報を共有して認識を揃えた上で、状況判断と軌道修正を重ねながら成果を生み出しつづける。
  • プロジェクトチームは、各自が自身の責任・役割を果たすことで相互の信頼関係を築き、最適化を繰り返すゴールに一丸となって向かう自律的・主体的なチームとして成長しつづける。
プロジェクトの推進とは、プロジェクトチームが小さな成果を生み出しつづけることを通して上の二点を実行し、プロジェクトの最終的な成果の達成に徐々に、しかし着実に近づいていくことを指す。プロジェクトの推進は、自律性と主体性を持ってチームメンバー全員で行われるものである。

Project Sprintの目的

Project Sprintは、さまざまなプロジェクトに取り組む中で得られた経験や知恵を集め、その中で共有されている重要なコンセプトを抽出して形作られている。実際のプロジェクトにおける実践から生まれた具体的な方法を、より抽象度が高く汎用性のあるかたちにして、個別性の高い個々のプロジェクトで応用可能にしたものが、フレームワークである。
個々のプロジェクトは、構成要素も置かれた環境もそれぞれ千差万別である。詳細な運営方法はプロジェクトごとに最適解が異なり、その判断はプロジェクトの主体となるプロジェクトチームに委ねられる。プロジェクトの運営に関する詳細な手順書としてではなく、プロジェクトに取り組むに当たってのものごとの捉え方・考え方や推奨される振る舞い、何に価値を置くとよいかを記述したものとして、Project Sprintのフレームワークを活用してほしい。
Project Sprintは、このフレームワークを補強したり理解しやすくしたりするための方法論や考え方を、チュートリアルとして提供する。チュートリアルは、プロジェクトの現場でProject Sprintを実践する際の手助けになるだろう。

Project Sprintにおけるプロジェクトとはどのようなものか

Project Sprintにおけるプロジェクトは、いわば「小さな実験の繰り返し」である。ここでいう実験とは、少し先の未来における小さくシンプルな成果の実現に向けて、チーム内で共有可能なかたちあるもの(作成物)をとにかくまず生み出してみる、ということを指す。
実験には、実現したい未来から逆算して現在の行動を組み立てていくアプローチ(バックキャスト)と、過去や現在の行動の結果をもとに未来を予測していくアプローチ(フォアキャスト)の二通りがある。プロジェクトの性質や状態からみて、適切な方を選べばよい。
  • バックキャスト型: プロジェクトの目的や背景を踏まえて最終的に達成されるべきと思われる成果を予測して、中期的な成果や日々の実験に落とし込みやすいシンプルな成果を定める。
  • フォアキャスト型: まず目の前の作成物に取り組み、その結果から成果の構造を徐々に組み立てていく。
いずれにせよ、最終的な成果や中期的な成果については、まだ漠然としたものでも構わない。まずは一歩踏み出してみるということ自体が大切なのだ。
実験して作成物を生むことには、二つのインパクトがある。
  • 成果の実現: 実験によって作成物が生み出され、それが成果の実現に結びつけば、プロジェクトの達成に向けた一歩となる。
  • 成果の変容: 実験に取り組むことでプロジェクトの内部で進捗が生まれるとともに、プロジェクト内部から外部への働きかけも行われる。それに伴って、プロジェクト外部の環境に関する情報(環境情報)が少しずつ明らかになる。この環境情報の入手により、プロジェクト内部でも、成果に向けた出力の軌道修正や成果自体の再定義が必要だと分かったり、この次に目指すべき成果が明らかになってきたりする。こうして実験から得られたフィードバックをもともとの計画に反映させることで、成果そのものが変容し最適化されていく。
もし外部環境が変化しないのであれば、最終的に実現したい成果から単純に逆算して、はじめから確実な計画を立てることができるだろう。しかし、変化の激しい時代にあって、最適な成果はその時々の外部環境の変化に応じて変容する。プロジェクトチームはその変化を捉えつづけなくてはならない。
したがって、Project Sprintにおいて、目指す成果は固定的なものではなく、あくまで設定時の外部環境を前提とした可変的なものである。そのため、外部環境の変化とその情報の取得に応じて、積極的に成果をアップデートすることが歓迎される。実験はそのアップデートのチャンスでもある。
プロジェクトチームは、こうして未来を予測し計画を立てて小さな実験を重ね、小さく成果を生み出しながら環境情報を取得して適応を続けることで、最終的な成果の達成へと一歩ずつ向かっていく。それが、Project Sprintにおけるプロジェクトの捉え方である。

Project Sprintにおけるプロジェクトは何を目指しているか

Project Sprintにおけるプロジェクトが目指すのは、出力によって成果を生み出すことである。
出力: プロジェクトチームが作成物を生み出すために自律的・自己完結的に取れる行動 成果: プロジェクトチームが外部のステークホルダーに提供できる価値
プロジェクトはあくまでプロジェクトチームが主体となって進めていくものではあるが、プロジェクトチームの行動の産物である成果は、プロジェクト外部にどのような価値を提供できているかで判断されなくてはならない。
出力と成果の関係は次のようなものである。
  1. 1.
    プロジェクトチームは、実現すべき成果を設定する。
    • この成果は、プロジェクトの目的や背景を踏まえた最終的な成果から逆算的に設定してもよいし、まず出力に取り組んでみた結果を踏まえて次に実現すべきものを明らかにするというかたちで設定してもよい
  2. 2.
    プロジェクトチームは、1で定めた成果の実現に貢献しうる出力目標を設定する。
    • 出力目標は、プロジェクトチームが外部に依存せずに達成できるものでなくてはならない
    • 出力目標は、プロジェクトチームが必ず達成すると外部に宣言するコミットメントである
    • 出力目標は、環境の変化の影響を受けにくいように、長くとも2か月以内を期日とする
    • 出力目標は達成したい成果をもとに設定されるが、必ずしも特定の成果に紐づいている必要はない(ひとつ、またはいくつかの成果を達成するための前提として必要だろうというようなものでもよい)
  3. 3.
    プロジェクトチームは、出力目標を達成するための行動を自律的に設定し遂行する。
  4. 4.
    プロジェクトチームによる出力もまた小さな実験であり、次の二つのインパクトを持ちうる。
    • 出力に取り組むことで得られた成果が、最終的な成果の実現に貢献する
    • 出力に取り組むことで得られた環境情報が、暫定的な成果を最適化する材料になる
  5. 5.
    プロジェクトチームは、上のインパクトに従って成果をアップデートし、出力目標やタスクの設定を最適化する。
この関係に則ってプロジェクトに取り組むことにより、プロジェクトチームは変化しつづける環境と目的に適応し、最適な成果を生み出すべく行動を最適化することができる。
出力目標は成果を前提に設定されるものではあるが、出力目標の達成がただちに特定の成果に結実しない場合もある。出力目標の設定時点では環境情報の取得が不十分であり、出力に取り組んでみてはじめて、その結果がプロジェクト外のステークホルダーに対する価値に繋がっていないと分かることや、最初に前提としていた成果とは違う成果に結びつくと分かることもあるからである。
Project Sprintでは、プロジェクトは特定のリーダーの指揮のもとで進むものではなく、自律性と主体性を持ってメンバー全員で進めるものだと考えている。それは単に作業を分担するということにとどまらない。プロジェクトの成果、つまりプロジェクトが外部に提供したい価値への認識をチームで共有し、自分たちが取り組む出力とその先にあるべき成果を全員が結びつけて捉えられるということを指す。

プロジェクトの要素

Project Sprintでは、プロジェクトを以下の三つの要素からなると捉える。

プログレス

プログレスは、プロジェクトにおける成果の実現を目的とし、そのための成果の設定と積み上げに着目する領域である。
プロジェクトチームは、プロジェクトチーム自身の意思に基づいて一連の成果を設定し、それに対応する出力に取り組む。プロジェクトにおける成果の実現は、イテレーティブかつインクリメンタルなものでなくてはならない。つまり、一定の期間で区切って進捗や全体像、取るべき道筋を見直しながら、小さな成果を段階的に生み出しつづけるということだ。成果と出力目標の設定は、外部環境の変化やプロジェクト内で得られる洞察に応じて繰り返しアップデートされる。

チーミング

チーミングは、信頼をベースに自律的・主体的に行動できるプロジェクトチームを作ることを目的とし、そのための出力とメンバー相互の関係に着目する領域である。
プロジェクトチームにおいて推奨される価値観や態度を共有し、それを個々のメンバーが思考や行動の拠りどころとすることで、振る舞い方に一貫性が生まれる。価値観が多様なものであることは言うまでもないが、Project Sprintでは、プロジェクトにおける振る舞いとして、自律的なチームであることに価値を置く。変化しつづける環境や目的に適応するためには、自律的に思考し行動して最適化を繰り返す必要があるからである。
自律的なチームとは、ある事柄に対して自分がチームのために何をすべきかを各メンバーが判断でき、かつ実際に行動できる状態のことを指す。そのためには、各メンバーが自身の責任・役割を理解して納得し、相互に期待値を共有している必要がある。その根底にあるのはメンバー間の信頼であり、この信頼の構築に最も効果的なのは出力に取り組むこと、つまり作成物を生み出すことである。作成物への取り組みは、成果を実現したり環境情報を取得したりする手段であるのと同様に、役割を引き受けてチームへの貢献と誠実さを示すことによって信頼関係を醸成する手段でもある。他のメンバーの作成物を率直かつ公正に受けとめることもまた、相互の信頼の構築に大きく役立つ。
チームメンバー間の信頼関係がベースにあるからこそ、メンバー個人の多様性が尊重されるとともにチームとしての目的が共有され、結果としてプロジェクトを全員で進めることが可能になる。

プロセス

プロセスは、プログレスとチーミングを最適化してプロジェクトを円滑に推進することを目的とし、そのための仕組みや手続きに着目する領域である。
チームの各メンバーは、継続的に作成物に取り組む中で、他のメンバーに伝えたいアイデアや違和感(テンション)を発見する。この発見を定期的・反復的なミーティングの場に持ち寄ることで、環境に対する認識をチームで揃え、課題に対してはチームで意思決定を行うことができる。その結果、成果や出力目標がアップデートされる(プログレスの最適化)とともに、各メンバーが自律的に次の行動を取ることができるようになる(チーミングの最適化)。

「プロジェクトの推進」とはどういうことか

Project Sprintにおいてプロジェクトの推進とは、ここまで述べてきたような実験と最適化を繰り返し行って、プロジェクトの最終的な成果の達成に向けて小さく確実に成果を積み重ねていくことを指す。
そのためには、プロセスがうまく機能してプログレスとチーミングが最適化されている必要がある。この三つの要素すべてに共通し最適化の材料になるのは、作成物への取り組みである。成果を生み出すにも、チームの信頼関係を築くにも、改善のための気付きを得るにも、作成物への継続的かつ自律的な取り組みが最も重要である。
各メンバーが自律的に出力に取り組むためには、次のようなことが必要である。
  • 実現すべき成果がプロジェクトチーム全員によって合意・納得され、環境の変化に応じた成果の最適化も都度共有されて認識が揃っていること
  • 各メンバーが自身の責任や役割を自覚して納得の上で引き受け、相互の期待値を共有していること
この2つを実現するにあたって、Project Sprintではプロジェクト定例会議をプロジェクトの軸に据え、行動の起点とする。プロジェクト定例会議とは、定期的・反復的にチームメンバー全員で行われるミーティングである。プロジェクト定例会議の目的は、作成物を生み出すことではなく意思決定を行うことである。プロジェクト定例会議は、よりよい形で成果を生み出すために、個人では判断しきれない事柄に対しチームとしての意思決定を行い、個々のメンバーの行動の前提を与えるものであると言える。
重要なのは、チームメンバー全員が一時的に同一の環境に固定されてリアルタイムで会話をすることにより、素早く効率的な認識合わせと全員にとって納得感のある意思決定という、同期的な会議でしか生まれない効果を生むことだ。これを定期的・反復的に実施して各メンバーの作成物への取り組みを共有することにより、次のようなことが可能になる。
  1. 1.
    環境情報や相互の役割への認識が揃うことで、価値や信念を共有し共通の成果を目指すプロジェクトチームとしての結びつきと一貫性が生まれる
  2. 2.
    アイデアの共同創造や問題の共同解決により、各メンバーの行動の前提となるプロジェクトチームとしての意思決定が下せる
  3. 3.
    全員参加で会話することで、メンバーそれぞれがプロジェクトチームとしての意思決定に納得し、自律的に次の行動に向かうことができる
また、プロジェクト定例会議はプロジェクトに一定のリズムを生み出す。このリズムがあることで、タスクの粒度が揃えやすくなったり作業計画が立てやすくなったりするため、各メンバーの行動の習慣化も促される。習慣化された行動により作成物が定期的・反復的に生み出され、それがプロジェクトをアップデートしつづける材料となる。 
最終更新 1mo ago